マウスピース型矯正装置による治療に関する 見解及び考え方

 これからマウスピース型矯正装置による治療を始め ようとお考えの患者様および国民の皆様への提言及 び、注意喚起

 

                         特定非営利活動法人 日本成人矯正歯科学会

 

1) マウスピース型矯正装置による治療を受ける前に確認すること

 本当の矯正治療とは歯並びを治すだけでなく、咬み合わせ、口元なども 含めて改善、治療するものです。特に咬み合わせは重要です。そのドク ターはその範囲まで治療する事を説明していますか?

 

* そのドクターは矯正専門、あるいは矯正歯科の本学会が認めた研修機関 で研修を終了していますか? なになに社の認定ドクターではありま せんか?あなたの先生が矯正歯科治療を専門に行う歯科医師か学会認 定医かよくご確認ください。

 

* マウスピース型矯正装置による治療で、よく患者様より「咬みにくくな った」「前より出っ歯になったような感じがする」「一度治ったがすぐ元 に戻ってしまった」などのクレームが届いています。 これらに対して、的確な説明をうけていますか?

 

2)マウスピース型矯正装置による治療の利点と欠点をご理解下さい

 

マウスピース型矯正装置による治療には非常に良い利点がありますが、同時 に多くの欠点もあります。よく知ってから選択してください。

 

① 利点 *他人から目立ちにくい

*着脱が可能なので歯磨きなど清掃がしやすい

*金属を使用しないためそのアレルギーの心配が少ない

*診察室での治療時間が短い

 

② 欠点 *一日の装着時間がある程度長時間必要であるため、使用状況によっては効 果が得られない場合がある。また治療中かみ合せに違和感を覚える場合が ある。

*歯の移動量の制限が(従来の矯正装置と比べて)多いため、その適応症は 限られた症例になる可能性がある。

*骨格性不正咬合(骨格性上顎前突、骨格性下顎前突など)には改善が困難 なため適さない場合が多い。

*精密な歯の移動が困難な場合も多くあり、満足な治療結果が得られない可 能性がある。

*国内の歯科医療機関や歯科技工所で製作されたマウスピース型矯正装置 は日本国薬機法上の医療機器に該当しませんが歯科技工士法の矯正装置 に該当します。一方、海外で製作されたマウスピース型矯正装置は日本国 の薬機法上の医療機器にも歯科技工士法の矯正装置にも該当しません。

 

3) 注意していただきたい事項 マウスピース型矯正装置による利点と欠点を知って頂いた上で以下の注 意事項を確認して下さい。

 

① 現在、矯正歯科領域全般にわたる基本的教育及び臨床的トレーニングを 受けていない歯科医師によるマウスピース型矯正装置による治療が少な からず行われ、一部の患者様との間で治療、費用に関してトラブルが発 生しております。矯正歯科治療は正確な診断や治療計画に基づいて行わ れるべき医療行為であり、マウスピース型矯正装置の誤った使用は予期 せぬ大きな問題を引き起こす可能性がありますのでご注意ください。

 

② 日本でもマウスピース型矯正装置を提供するする会社が増加し(宅配業 者も参画しています)、特にコンシューマーダイレクトと呼ばれる歯科医 師がほとんど関与しないマウスピース型矯正装置が販売されています。

これは歯科医師がほとんど関与しないため治療と言えるか疑問です、使 用に当たっては非常に注意が必要です。注意喚起いたします。

 

③ 治療に当たってはその適応症の理解など専門的な知識が必要です。矯正 歯科治療を専門に行う歯科医師や、本学会の認定研修施設あるいは本学 会が認める研修機関(歯科大学、歯学部の矯正学講座)にて十分な矯正 歯科全般にわたる基本的教育と臨床的トレーニングを受けた歯科医師に よる検査、診断、治療計画に基づく治療を受けられる事を推奨いたしま す。

 

4) まとめ

以上のことよりマウスピース型矯正装置による治療を受けられる場合は 次の確認事項をチェックされてから安心で安全な矯正治療を受診されるこ とをお勧めします。説明が不十分と感じたらしっかり質問し、納得されてか ら治療を開始して下さい。

 

□マウスピース型矯正装置を用いた治療も矯正歯科治療には変わりありま せん。そのため治療前の十分な検査、診断、それに基づいた治療計画の立 案が必要です。歯及び顔の写真 ( 病態写真 )、レントゲン写真(横顔、正 面)、歯型を作るための型取りが終了し、それらを基に詳しい説明を受け ている事(特に横顔のレントゲン写真による診断が重要であり必須)

 

□マウスピース型矯正装置は海外で製作されているものと国内で製作され ているものが存在する事を説明している事。

 

□特に海外で製作されているマウスピース型矯正装置は日本国の薬機法上 の医療機器に、そして歯科技工士法上の矯正装置にも該当しないことを説 明し、使用に当たってはその歯科医師個人の全責任において治療を行うこ との説明受けている事。

 

□治療を担当するドクターは矯正歯科治療を専門に行う歯科医師、あるいは 本学会が認める研修機関において矯正歯科全般にわたる基本的な教育と 臨床的な研修を受了している事。また治療中のチェック及び調節は助手で はなく必ず歯科医師が行っている事。

 

□マウスピース型矯正装置の治療で十分な結果が得られなかった場合、マル チブラケット法などによるリカバリーするための治療が必要であること の説明を受け、当該診療所で継続して治療を受けることができる事。